web版 陽岳寺護寺会便り

下町深川の禅寺 陽岳寺からのお知らせのブログです

お前のものは俺のもの、俺のものもお前のもの

【コラム2】お前のものは俺のもの、俺のものもお前のもの

お前のものは俺のもの
 俺のものもお前のもの

ドラえもんという作品のなかで、ガキ大将的存在のジャイアンが言うセリフ。
「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」
他人の所有物など存在せず、すべて自分の所有物だという宣言です。
とても利己的で独占的な発言に見えますが、新解釈(エピソード)が出てきます。のび太のランドセルが大変な目にあったとき、ジャイアンは我がごととして必死になるのです。おまえのものはおれのものなのだから、お前のために俺が必死になるのは当然だろうと。
これだけで十分感動的と言えますが、私としてはもう一歩すすめてみたい。それが、
「お前のものは俺のもの、俺のものもお前のもの」です。

他人のものを盗んではいけない(不偸盗)と、大人に言われて、ここまで大きくなりました。しかし、本当のところはどうでしょう。
だれかの時間を盗んでいないか?未来の資源を盗んでいないか?いまの幸せのために、将来の自分から希望を盗んでいないか?
たとえば・・極論ですが、妻は夫にたいして、「私は自分の都合で動けないのに、自由に予定を組んでいるダンナに腹が立つ」そうです。お前の時間も、俺の時間も、二人のものです。この輪を大きく広げれば、家族や日本、地球や宇宙へとつながります。
わたしたちは皆、他人のものを盗んで生きている・・と言っていいかもしれません。
そしてそれがお互いさまであるならば、「お前のものは俺のもの、俺のものもお前のもの」。
お互いさまなのだから、盗みあってもいい・・とはならないはずです。
むしろ、なにもかもが他人からのいただきもの。もういくつ寝るとお正月。一度 ぬすんだものを指折り数えてみてはいかがでしょう。