web版 陽岳寺護寺会便り

下町深川の禅寺 陽岳寺からのお知らせのブログです

すなお(素直さを思い出す)

人は生きている限り、多くの刺激を受けています。その刺激の「差」を比較して優劣をつけず、ただあるがまま受け止めるにとどめよ!と仏教は説きます。

人生山あれば谷あり。良いこともあれば、嫌なこともあるでしょう。自分の気持ちがコロコロと変わるように、自分のまわりも変わってしまうものです。それでも、どうか自分の思うようにと願ってしまうのが人間なのですが。そして思うようにいかないが為、苦しむ。


では、どうしたらいいかと考えます。
その答えの一つは、「差」を「差」として認めるということ。私たちが本来持っている、素直さを思い出すことではないかと。


ダイバーシティ』という言葉があります。その意味は、『多様性の受容』、アメリカが発祥だそうです。
人種や宗教、性別などの差を「差」として認めつつ、全体として調和のとれた世界をめざそう!という理念から生まれたと考えられています。素直になれ!と言われても、素直になれないものです。それでも、私たちは素直であったはずなのです。
その素直さを思い出せば、人間の生活への見方が変わります。


仏教の語る世界観は、私個人だけで存在するものなど無いと示します。そこにあるのは関係性、縁起です。

自分と家族。日本と外国。地球と宇宙。人間と自然。内と外。関係性のつながり、その境はあいまいなものです。
だからこそ時と場合によって、それぞれ同じ場所が際立って見えたり、違う場所が際立って見えたりします。

すべては全体を含めてのことです。
ものごとの本質は、周辺事情でしかないのではと思います。


あいまいな境は区別することで分かりやすくなるかもしれません。しかし、感情や理性を超えたところを見ると。

想定外と想定内の境は明確でしょうか。スイッチのオンオフ、0か1、正解か不正解。以上の関係性は互いがあってこそ存在します。では、グラデーションはどうか。

私個人だけでは存在できないからこそ、関係性によって形作られる。その姿を素直な気持ちで見れば。

どうしたらいいか。素直さから起こる、その問いこそが生きる力なのでしょう。