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下町深川の禅寺 陽岳寺からのお知らせのブログです

映画『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』

映画『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』公式サイト
人種差別のはなし、とだけ聞いて、見てきました。


見てきた会場の雰囲気がよかったのか、みな同じ場所で笑い、同じ場所で泣き、スタッフロールが終わるまで席を立つ人は少なかった。
映画はとてもうまく出来ていて、それぞれの俳優さんはいい味を出しています。おかげで自分のことを棚上げして最後まで楽しく見られる。


自分はこんなことはしない。時代が違う。国が違う。背景が違う。性別が違う。映画だし。・・なんだかんだと理由をつけながらも、さらっとこの映画を見終って、じゃあ飯食うか。そうでもなければ、いちいち反応して、日々に疲れてしまうのかもしれません。
顔が平たんな私たちにはこの映画を見ても、登場人物に感情移入したり、自分がそこにいたらと考えたり、できません。それならばと、現実世界に目を向けてみたらどうでしょうか。
たとえば、路上で寝ている人々。シングルマザー。燃えつきた人。孤立死する限界家族。


終盤、母親が娘に「あなたは先祖の勇気を取り戻してくれた」と語りかけます。
子どものときはかわいいけど、大きくなれば親と同じで差別を当たり前のミシシッピ州の白人たち。真の差別主義者に見つかったら危険だ、本では牢獄には送れないが泥棒なら送れる、と自分の差別っぷりを意識しながら行動する彼女と、私たちに何の違いがあるのでしょうか。
先祖の勇気を取り戻すためには私たちはどうすればいいのでしょうか。なんの違いもないことを、そして違いを見出そうとしてしまうことを、見出そうとすることに背くことを、すべて明らかに見なければならないのでしょう。
けっこう怖くないですか。最後の最後、場面が変わらずにずーっとずーっと続いていくのは、あぁ映画って本当にいいものですね、と思わせない見後感を味あわせるかと思いました。

ヘルプ (上) 心がつなぐストーリー (集英社文庫)

ヘルプ (上) 心がつなぐストーリー (集英社文庫)


ヘルプ (下) 心がつなぐストーリー (集英社文庫)

ヘルプ (下) 心がつなぐストーリー (集英社文庫)


ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜

ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜とは編集