web版 陽岳寺護寺会便り

下町深川の禅寺 陽岳寺からのお知らせのブログです

平成23年度春季学生大攝心 後記

攝心中、ほんの少しですが雲水から僧堂での生活についてお話をしました。実際に、万年門の中で生活している者だからこそ、話すことのできる内容なのだと思います。
そこで、今日は参加者の方々が見ることが出来ない、攝心の裏側をお話したいと思います。

当日までの準備


行事を成功させるためには、いろいろと準備が必要です。

人材・・・知客寮、直日、侍者、典座

まずひとつは、人材です。
ここでいう人材とは、四役のことです。総まとめ役の知客寮、坐禅指導の直日、世話係の侍者、ご飯係の典座。最少人数で運営できるように、役は決まります。
最後の挨拶で、学生大攝心について教学部長様からお話がありました。「学生」大攝心という名前にある通り、はじめは各大学などの学生が主体となって行われていました。そして、居士・禅子さんの協力のもとにです。そこに直日だけ、雲水を迎えることになっていました。
それがいつ頃からか、円覚寺の修行道場にいる雲水の手で、四役すべてを担うようになりました。私も僧堂にいた時分、典座や侍者を務めたことがあります。
総まとめ役の知客寮のもと、雲水は力を合わせて学生大攝心の成功を目指します。

会場設営

平成23年度春季、今回の会場は、居士林でした。
昨年(平成22年度)の夏季学生大攝心は、大変な暑さを心配して、本山施設の信徒会館に会場をうつしての開催でした。本山施設ですのでちゃんとした冷暖房設備がありますし、参加者への配慮も考えてのことでした。
居士林には冷暖房設備がありませんので、参加者の方々は大変苦労されたと思います。最後の感想で、「寒くてなかなか眠れなかった」と話した方がいらっしゃいました。柏餅のように、あんこの自分、餅の布団1枚でくるまって寝ます。それに毛布が2枚です。今思い出しても、初日の夜はかなりの寒さでした。居士林の禅堂は、僧堂の禅堂よりも寒かったような・・・。


会場は居士林です。居士林では、さまざまな座禅会が行われております。また、座禅会に関係なく、居士・禅子の方々が使用しております。そのとき、布団や毛布を干したり、掃除をしています。雲水だけでなく、そういった普段居士林を利用されている方々の協力もあって、学生大攝心は成り立っているのです。


それでも事前に布団を干したり、掃除をしてから、当日を迎えます。日々の居士林の維持を居士・禅子の方々が担われ、雲水によって攝心直前の準備が行われるのです。
攝心参加者、何十名分ものご飯やお茶を用意するのですから、その分の薪や梅干し・たくあんなど食材も必要です。注文もしなければいけません。具だくさん味噌汁の材料ですとか、最後の総茶礼用の豊島屋のらくがん。
カマドの整備。釜もさびているかもしれません。3日分の薪や梅干し・たくあんを僧堂から運びます。参加者が多かったり、雨が降るようなら、本山から下駄や傘を借りてきます。
攝心会中、参加者の方には、自分用の湯飲み・持鉢(ごはんを食べる器)を配ります。ちゃんと器を熱湯消毒。持鉢拭き・持鉢包みを洗って干したもので包み、箸をつけます。

当日を迎えます

準備万端であっても、当日を迎えると、バタバタと・・・。最小の時間、最少の人数で整えます。当日の準備も含めてバタバタ・・ではいけないのですが・・・ね。

御垂示・御提唱をいただきました青松老大師にお礼申し上げます

今攝心も青松老大師をお迎えしての開催でした。御垂示をいただき、御提唱もお願いいたしました。攝心によって提唱される内容は違います。前回は白隠禅師坐禅和讃でした、その他には延命十句観音経など。今回のように、お経ではない題材を取り扱うこともあります。
僧堂師家、管長や他寺住職を兼任されている御身、ご多忙のなか老大師には御提唱していただきました。約一時間お話していただくわけですから、御提唱にも準備が必要です。再度、お礼申し上げます。誠にありがとうございます。


また、僧堂の宿龍殿を御提唱の会場として使わせていただきました。僧堂では提唱一日目には作務、二日目には托鉢と予定がありましたけれども、準備していただきました。ちなみに、実際の僧堂の攝心での御提唱と同じように、太鼓(法鼓といいますが)出頭でした。

茶礼の準備

毎回、茶礼用のお菓子は用意しておりますが、塔頭寺院のご厚意により、今回はいろいろと用意することが出来ました。龍隠庵徒弟さん、典座さんとリンゴを剥いたり、野菜を切ったり、餅を焼いたり。私も手伝いました。・・・といっても、何をお出しするか決めたり、物の用意、仕上げは龍隠庵徒弟さんの手によるものです。ありがとうございます。ヨーグルトは黄梅院様からのご供養でした。
揚げ餅は、龍隠庵での餅つきの鏡餅でした。茶礼・お粥に入っていた、のし餅も龍隠庵作です。リンゴなども龍隠庵様へのご供養を、さらに手を加えて用意したものです。
下の画像は龍隠庵徒弟さんが、離れの典座でカレーを煮込んでいる様子です。ちなみに時間は、二日目の午前0時。

今攝心 無事円成の運びと相成りました、その後は・・・

参加者の方々には、粥座(朝ご飯)のあとに、堂内外の掃除、典座のお手伝いをしていただきました。最終日には、会後に居士林の片付けも手伝っていただきました。例年、この片付けには時間がかかるのですが、今年はスンナリと終わりました。手伝っていただいた皆様、ありがとうございます。片付けに来てくれた雲水もありがとう。
今攝心後に居士林を使われる居士・禅子の方々、使用前と変わっているところもあるかもしれません。居士林出身の者と見て回りましたが、お手を煩わせる点があるはずです。申し訳ありません。
下の画像は龍隠庵から眺めた風景です。

学生大攝心に参加される方へ

巷のヨガのメディテーションクラスのように、手取り足取りとまではいきません。和やかな雰囲気で楽しく、ということもありません。冷房器具も暖房器具もありません。
かわりに、凛とした空気のもとに堂内で坐禅していただきます。坐相説明など坐禅指導いたします。老師に御提唱いただきます。堂内で暮らしていただき、集団生活のなかで寝食を共にし、その空気に触れ、特殊な体験していただきます。JR北鎌倉駅前とアクセスのよい土地ながらも、静かな場所で、身体の声を聞いていただきます。もちろん、体調管理には気をつけております。本人が気付いていないことまでも、気を配ることが雲水の仕事です。それでも、会中もしものときは、役寮に申して出ていただければと思います。

最後に

居士林主事をされております方は、黄梅院副住職であります。御法務御多端の中、朝晩の坐禅にいらっしゃいました。
役寮には、知客寮、直日、侍者、典座があります。
今攝心にて知客寮を務めました者は、僧堂の知客寮も務めていました。最後の挨拶に来ていた知客代行もおりましたが、彼は居士林と僧堂を行ったり来たりしておりました。
直日も、僧堂の直日も務めている者であります。彼の告報は定評があったことを思い出し、お話してもらいました。
今攝心では侍者が3人体制でした。じつは私以外の侍者2人は、今攝心の明けた次の日(3/7〜)から、山梨に約一週間の遠鉢(遠地への托鉢)に出ることが決まっていました。今朝早く、雪のなかを、山梨に向けて出立したそうです。
典座の者は、今回が初めて大攝心の荷担であります。

そして、参加者の方々。寒さ、足の痛み、制限された生活。そのご苦労はいかばかりだったかと思います。大変お疲れ様でございました。
老師が楽しみにしておられることもあります(「ツンデレ」を連発しているようです)。老師も普段ツンツンにて雲水の指導をしておりますが、内心はデレデレ・・・なのかと・・・?
また、皆さんにお会いできることを楽しみにしております。