web版 陽岳寺護寺会便り

下町深川の禅寺 陽岳寺からのお知らせのブログです

病める時も健やかなる時もおばあちゃんの知恵


テレビが家の中心にあると、生活の中心にもなってしまい、陽岳寺は朝からNHKを見ています。
ニュースを見、連続テレビ小説を見て、あさイチを見ているのですが、22日は「おばあちゃんの知恵」と題した特集がされていました。

「無駄に包丁を使わないおもてなし料理」ですとか、「ものを大切にするのがモットー」ですとか、「山にあるもので、必要な栄養をとる」ですとか、様々な知恵が紹介されていました。
こうした「おばあちゃんの知恵」、昨今まったく見受けられないような気がします。
スーパーにいけば、いったい何羽分だ?と思うほどパック詰めされた唐揚げが並んでいます。コンビニにいけば、短時間で廃棄される大量の弁当や中華まんなどのファストフード。
しかし、「合理的生活(おばあちゃんの知恵)」を勧める媒体はたくさんあります。断捨離とかいって無駄を省こう!ですとか、家庭菜園!ですとか、料理や家計や節約術!ですとか、テレビや雑誌・書籍などメディアで割とあふれているように思います。「合理的生活」が見直されているのかもしれません。「おばあちゃんの知恵」が名前を変えて、再登場です。
吾唯足るを知る、分相応、等身大。必要ないものは取らない。自分のまわりにあるもので満ち足りる生活を送ることこそ、「おばあちゃんの知恵」なのです。「合理的生活」を送っていれば、無駄な悩みや勧誘にひっかかることもないのでしょう。
そんなメディアに触れず、そんな生活を地でいっている場所があります。修行道場です。

修行道場・・・回顧!「自給自足、足りないものは補い合う暮らし」

修行道場では、戦前戦後くらいの生活をしています。日本全国には臨済宗の修行道場が40ほどの数があります。全部が機能しているかまでは存じませんが、厳しい修行が行われていると思います。
僧堂の場所によって、近隣の状況も、設備も、修行の内容の偏りも、異なります。
鎌倉の円覚寺の僧堂の東司(お手洗い)は水洗ですが、何年か前までは汲み取り式だったそうです。汲み取ったものはどうするか?畑の肥料にさせていただきます。
ご飯は薪で焚きますし、お風呂も薪で沸かします。
僧堂の生活は大変合理的です。たとえばお風呂。先日、日記で書きましたが、僧堂のお風呂は、五右衛門風呂です(2011-02-07 - たぜあた -web版陽岳寺護寺会便り-)。
毎日、いつでも、お風呂に入れるわけではありません。汗をかいたり、寒くてかなわんだろう・・・となれば、お風呂を沸かすことになります。薪は有限です。それはそれは作務で薪割りをしますけれども、材料の丸太や廃材が無ければ作りようがありません。しかし、日々の飯焚きや井戸水をわかしてお湯を作ったりするのに、薪は必要です。風呂用に木材が用意できないということはありませんでしたが、そろそろ無くなってしまうのではないか??という状況で、山へ拾いに行ったことがありました。
葉っぱだけで風呂を沸かせと言われた先輩もいたそうですが、それも修行なのでしょう。飯炊きをしようと思ったら、薪がビショ濡れで火がつかない、とか。


では、食事はどうか。
基本的に自給自足です。畑の野菜でつつましく、です。が、たまぁに野菜をどさっといただく。
先日きいたところによると、じゃがいもが100何十キロも送られてきたそうです。大の大人、それも全員男が20人いる・・・といっても、それは大変な量です。いくら根菜だからといっても、いえいえ贅沢なんて言えません。とてもありがたいことです。
じゃがいもがあるなら、じゃがいもを食べます。たくさんあるなら、たくさん食べられます。
僧堂はタイムスケジュールが決まっています。その中で楽しみな時間といったら、はっきり言って食事しかありません。たくさん、おいしいものが食べたい!・・・食い意地はっててごめんなさい。
無いなら無いでいいんです。
夕飯は夕方前くらいにいただきます。お昼に焚いた麦飯とおみおつけで、おじやにします。のばします。
とても合理的です。


三食ちゃんと食べた方がダイエットにきく、とか聞きますけれども、そんなにお腹が減っていないなら食べなくてもいいんじゃないか?と思ったりもします。動かなければ、それほどお腹は減りませんからね。
海がなければ、山でとれるもので代替えます。質がなければ、量で補います。
「〜〜するなら、これだけは読んでおくべき本」「あなたが〜〜べきたった一つの理由」「〜〜絶対攻略マニュアル」といって、たいしたことではないのに大事だ、知っておくべきだと示してくる誘いは、合理的生活をしている人にとって何でも無いままなのでしょう。
経験として分かっていて、生活を通して継承されていくおばあちゃんの知恵は、『ブレない心』の側面をうつしたものなのだとテレビを見ていて思ったのでした。
(画像は円覚寺の池&方丈&大書院です)